山猿塾だより 丹波山猿塾だより 丹波山猿塾だよりバックナンバー

ここは、丹波市島で山猿塾を主宰する青木慧さんからの便りのコーナーです。


目  次
◆山猿塾だより◆141-マムシの収穫 FAGRI掲載日 97/08/17 ◆山猿塾だより◆142-横着農業の収穫期 FAGRI掲載日 97/09/06 ◆山猿塾だより◆143-初日役と草刈り機 FAGRI掲載日 97/09/10 ◆山猿塾だより◆144-草刈り機&日役 FAGRI掲載日 97/09/13 ◆山猿塾だより◆145- FAGRI掲載日 97/09/14 ◆山猿塾だより◆146-ふれあい牧場の悩みFAGRI掲載日 97/09/14 ◆山猿塾だより◆147-山猿塾の特徴 FAGRI掲載日 97/09/15 ◆山猿塾だより◆148- FAGRI掲載日 97/09/15 ◆山猿塾だより◆149-軟弱親父め! FAGRI掲載日 97/09/16 ◆山猿塾だより◆150-軟弱親父め! FAGRI掲載日 97/09/16

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11046 ◆山猿塾だより◆141-マムシの収穫 FAGRI掲載日 97/08/17  97夏キャンプ山猿塾に参加のみなさん、御苦労さんでした。  山猿塾特産の山ダニのお土産はなかったですか。今年は収穫できないかと不安だった のに、キャンプ初日の14日にマムシを収穫したので私は御満悦です。 芝田まことさん(#1100,11042)  また通し番号を間違えてしまいましたね。前回は飛躍だったのに、今回は後退でした。 キャンプなのに厄介をかけてしまいました。芝田さんでなくても、あのプログラムを作 った当人でもこれ以上のことはでない、やらない、でしょうね。  コンピューター病の手とも相談しながら、パソコンの全面活用から最低限の活用に撤 収するつもりです。十何年も腕を痛めながら蓄積した情報資産を無に帰する無責任業界 とは付き合いきれません。このままではパソコンもユーザーから見放されるでしょう。 KOHさん(#11023,24,35,36,37)  キャンプに先立って草刈りなど御苦労さんでした。草刈りは厄介でしたでしょうが、 その後、小豆もけっこう育っています。雑草のなかでもけっこうしぶとく生きています。 下段の西側の豆は単なる小粒の大豆です。同じ豆でも、ここはやはり丹波の黒大豆が一 番土地に合っているようです。  よく遊んでもいましたが、せっかくの写真がピンボケとは情けなや。カメラのせいに しちゃいけませんよ。私も自然観察記録をためていくため、接写ができるカメラがほし くなっています。 Nackさん(#11030,45)  キャンプ準備委員長&事務局、どうもお疲れさんでした。キャンプまでは来客中でも 「執筆中」の立て看板を土間において、執筆に専念していました。それだけに精神神経 労働のストレスが蓄積していました。  だから、キャンプ期間は執筆を中断し、できるだけ肉体労働をやろうと待ちかまえて いました。初日はマムシの収穫で石の山を分解し、また積み直し。二日目は、みなさん が刈ってくれた雑草に堆肥をのせ、さらに土をかぶせてうねを作り、大根とホウレンソ ウの種をまきました。  3日目はNackさんが帰ってから、みえださんが草刈りを始めてくれたのに刺激さ れ、道路補修にかかりました。今日17日も夕刻2時間は道路工事の土方でした。しか も、今日は猟友会会長さんに角突きの鹿の骸骨をいただき、大喜びです。  お返しの特産品はなにもなく、秘蔵のマムシ酒でもと思いましたが、猟友会会長さん も3匹秘蔵しているということでした。このほかになにか特産はあるか? まだなにも ないなあ。せめて、創作住宅の記録をまとめた拙著を早く仕上げて、贈呈しなくては……。 サナギマンさん(#11031)  単身赴任、御苦労さんでした。Nackさんが責任を持ってくれたので、助かりまし た。こんな気楽なキャンプははじめてでした。  イシガメは結局、シマヘビにやられてしまったようです。坂の崖から横穴をあけられ ていました。それにしてもしつこいシマヘビです。シマヘビもマムシと同じ効用がある ので、2、3匹くらい、焼酎につけてやろうかなあ?  キャンプが終わって、5日以来はじめて夫婦だけになりました。皮肉にも月夜で、今 日は満月です。あたりに月影が写っています。今日からふたたび執筆に集中しています。 2年余の全身を使った重労働が、それだけの執筆を可能にしてくけました。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11158 ◆山猿塾だより◆142-横着農業の収穫期 FAGRI掲載日 97/09/06 ◇単行本の執筆終了◇  創作住宅の自力建設の単行本を本日、ただいま無事、書き終えました。芝田まことさ んになにかとお世話になったEISALが、働いてくれたからです。ありがとう。ソフ トの方は依然としてなかなかいうことを聞いてくれませんが、単行本を書き終えたので、 またいろいろ試してみます。  単行本は汐文社から出版する予定です。店頭に並ぶまでには月日がかかりますので、 そのさいにはまた案内させてもらいます。とりあえず目次だけ紹介させてもらいます。 ◇単行本の主な内容◇ 『自然に学ぶ創作健康住宅−素人だからできた自力建設』(仮題)    目    次  1 その土地の自然に従う 2 木に学びその木の質に従う 3 荒れたみどりと住宅産業 4 「背水の陣」で丹波へ移住 5 一人作業は創意工夫の連続 6 自然に鍛えられた日々 7 コンピューター病の自力治療 8 建築費用からみた総決算 9 だれでも建てられる ◇予想以上の横着農業収穫◇ サナギマンさん(#11069)  ナス4個、シシトウ10個ほどを横取りしました。けっこうな味でした。ごちそうさ ま。今日は1カ月ぶりに雨になりましたが、干ばつ気味でトマトは右半分ほどが黄ばん でしまいました。あわてて山水をやりましたら、潤いの雨となりました。  サトイモ、落花生、サツマイモは順調です。横着農業の不耕起栽培が、予想以上に順 調です。特に丹波の黒大豆はたいしたものです。まいた種に早生の黒豆が混じっていた らしく、これは実り始めたので、2日前に飯に入れて味わいました。早生が10%くら い混じっているので、ぼちぼち本格的に食糧にします。  黒大豆は10月中旬以降が収穫期ですので、ちょうど97秋キャンプ山猿塾のころが 収穫期になったらいいなあと期待しています。準備委員長のNackさん、期待してお いてください。  草のなかにばらまいた小豆がこれまた予想以上に順調です。こんなに簡単にできてし まっていいのかなあと、心配なくらいです。つづいてソラマメとエンドウを作る予定で すが、これも成功すると丸類は自給自足できるはずです。  わが家は豆をよく食べます。女房も自給できれば月1万円は違うとソロバンをはじい ています。豆類の自給率は下がっており、ポストハーベストの心配が多い作物です。横 着農業は自給率の低いものから順に作っていく予定です。  キュウリも食べ量をまかなえるよえになっています。ただコマツナとホウレンソウは 黒大豆におされ陰になってしまい、その姿も行方不明になってしまいました。白菜もテ ラスの上から種をばらまきましたが、水不足で芽も出ないまま行方不明です。  大根は上段の田んぼに、みなさんが刈ってくれた雑草を集め、その上に堆肥と土をか けたうねを作り、種をまきました。これも順調です。似たような横着で人参もまいてい ましたが、かなり育ってきました。問題はすぐ下ががちがちの土地で雑草が根をはって いたところですから、どこまで根が育つかです。  グリーンボール、キャベツなどの苗をいただき作付けしました。自給のレパートリー をどんどん増やしていくつもりです。 ◇またまたマムシの収穫◇  キャンプ初日に看板の下の石の山からマムシを収穫したのにつづき、その4日後に立 派な赤マムシを収穫しました。道路補修のため一輪車に土砂を積んで下りていったとこ ろ、林道に入ってすぐマムシが林道を横切っているのを見付けました。  近付くと予期したとおり、道の真ん中でドクロを巻いて攻撃体勢に入りました。しめ しめと、ドクロの上にゆっくりと一輪車をおいておき、あとは7つ道具をそろえてから 収穫しました。わが家のマムシ酒はこれで5本になりました。  キャンプ後は晴天がつづき、参加のみなさんを悩ませた山ダニは激減しました。それ でもまだわが家の通気庭にもいますので、たばこの吸いがらをたくわえてニコチンを製 造中です。冬になればまた煙突のススをためて山ダニ抑えの薬にします。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11171 ◆山猿塾だより◆143-初日役と草刈り機 FAGRI掲載日 97/09/10 ◇道造りで初日役◇  9月7日は地元の集落で道造りがあり、はじめての日役にでました。道造りといって も道路の土手の草刈りです。いつもサナギマンさんにおまかせの草刈り機を引っぱり出 して、これまたはじめての草刈り機の使用となりました。  前半は順調に草刈り機が動いたのですが、エンジンの馬力があがらなくなり、どうも 吸排気がうまくできなくなったようです。急場に間に合わず、勝手に早めに切り上げま した。夜は公民館で会食となり、集落のみなさんにはじめて公式に新入りの挨拶をしま した。 ◇またまたマムシを収穫◇  翌8日、まだ薄暗い午前5時過ぎ、いつもの火箸とマムシ杖も持たずに外に出ると、 作業小屋に駐車しているクルマの下を通り抜けて、電動工具などをしまっている物置へ マムシが向かっているところでした。  それっ!と引き返してマムシ捕りの火箸と杖をとり、物置に潜り込む寸前にあやふく マムシを押さえました。今年は不作と思っていたのに、マムシの豊作です。これで大型 のものばかり3匹です。マムシ酒も合計6本になります。  わが家でなにが一番早く自給できたかというと、ムカデ油についでマムシ酒というこ とになるでしょう。いままでのところ、見付けたマムシは100%、無傷で生け捕りに 成功していますが、いつまでもこの調子が維持できるとはかぎりません。 ◇草刈り機を分解、修理◇  昨9日はマムシがこれまでに出てきた場所に的をしぼり、わが家の周辺の草刈りをや ろうと、草刈り機を使いました。やはりすぐ馬力がでなくなります。途中であきらめ、 道路補修に切り換えました。  今日10日は心を入れ替え、朝から草刈り機を分解し修理にかかりました。消音器を はずして金槌で軽くたたいてカーボンを落としました。キャブレターを分解し不調の原 因がわかりました。スポンジのエアークリーナーに油と燃料が詰まり、これではエアー を吸い込めません。  チップソーにすぐ刈った草が詰まるのも、押さえの金具が逆に付いていたためでした。 ぶれは十分に直せませんでしたが、油も注すと快調に使えるようになりました。これま でにマムシを見付けた周辺の雑草やササを刈りました。 ◇人力の道路補修◇  すっかり荒れている山猿塾までの坂道約200メートルを、人力で補修中です。池の 残土は不耕起栽培用に残しておき、上の田に上がる道をツルハシで削った土を一輪車で 運んでいます。この土で深くなった坂道のわだちを埋めています。これはなかなかの重 労働です。  それでも単行本執筆で最小限の肉体労働しかしなかったので、いい運動になっていま す。使う機械はせいぜい草刈り機くらいで、汗をかく農業をめざしていますので、道路 補修はそのからだ作りには大いに役立ちます。高く付くのはビールの燃料代くらいで、 たかがしれています。  できれは秋のキャンプまでに完了し、遅くとも冬の積雪までに完了しようと思ってい ます。からだを鍛えながら、つぎの本業の仕事をなににするか考えています。  テラス脇の私道の土手に生えたコスモスに、つぼみがついてきました。雑草や黒大豆 と競り合って、倒れずに丈夫に育っています。いずれ私の仕事場から机に座ったまま、 花見ができるでしょう。月夜のコスモスが一番すてきです。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11205 ◆山猿塾だより◆144-草刈り機&日役 FAGRI掲載日 97/09/13 能登夢屋さん(#11176)  草刈り機は中古品を安く買ったもので使用説明書がありませんでした。だから、1つ にはその構造を知ろうと分解してみました。使用経験者からの親切なアドバイスは、た いへん助かりました。知らずに機械油を差してしまいましたが、チューブ入りグリスを 買ってこなくちゃ。  自分で家1軒を建てましたので大工道具一式はそろい、自分で分解したり修理、補修 もしていてますが、農業機械はもっとたいへんなようですね。わが家では草刈り機くら いにとどめておくつもりですが、近隣の農家を見ていると機械屋みたいにならないとや っていけないようです。  親しい農機会社の支店長の話によると、地元の農家の平均的な農機投資額は1000 万円で、それを納める建物が1000万円ということですから、とてもついていけません。 開き直って自分の肉体に依存した兼業農家に徹するつもりでいます。 ヨーダさん(#11193,4)  いろんな草刈り機や資材があるんですね。おおまかでいいかげんが得意なものですか ら、スポンジのエアークリーナーはティッシュペーパーでぎゅっと握り、べとべとと燃 料を吸い取ってしまいました。これでは完全とはいえませんよね。それでもなんとかな ったようです。  機会を見て、なんとかという洗浄油できれいにしてやります。ありがとう。 永井英司さん(#11195,6)  お近くですね。〈日役も娯楽の1つ〉なら、地元のみなさんも大歓迎でしょう。当地 では日役は平均月1回はあるでしょう。集落の農業、林業の維持が精一杯の状況です。 農会の日役でイノシシ防御の電気柵の修復、草刈りだけでも数回はありました。  農地は持っていて農会に入ってはいるが、農地はすべて他人に貸し、勤めに出て農業 はやってないからと、日役に出ない人も増えてきたそうです。一方、農地を借りている のは別の集落の人で、こちらの日役には出ません。農会の日役も壁にぶつかり始めました。 わが家は農会に入る資格もありませんが、農会の日役に出てくれないかという相談が持 ち込まれました。  集落の山の日役のほか、寺や町村合併前の旧村の山の日役などもあります。また、近 くの神社の当番や冠婚葬祭とかあれやこれやで、〈日役も娯楽の1つ〉であると楽しめ る人は幸運で大歓迎ですが、負担になっている農家が少なくありません。  わが家の場合は日役が少ないので、山猿塾にいたる約200メートルの農道と林道は、 せめて自力でやろうと、このところ毎日2時間ずつ自主的日役の道造りをやっています。 私も楽天家のつもりですが、なかなか〈日役も娯楽の1つ〉なんていいきれません。で も、日役での互いの人間的な交流を楽しみにしている人は何人もいます。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11215 ◆山猿塾だより◆145- FAGRI掲載日 97/09/14 芝田まことさん(#11160)  宙宜君と数人の友だちは、子どもたちだけでくるのでしょうか。文面ではそのように も受け取れますので、宙宜君たちにかぎらず一般的に今後もありうるそういう場合を想 定し、いろいろなことを考えていたので、返事が遅れてしまいました。  くわしいことは回をあらためますが、予定もあるでしょうから結論だけ先に記します。 いくら「他人同士の親戚」の付き合いとはいっても、他人の子どもに対する親の責任の 代行はできません。未成年の子どもの「ケガと弁当」は、親が全面的に責任を負ってく ださい。  先のことはわかりませんが、現在の当地の自然環境(特にマムシ)や近隣の農家との 関係(特にマツタケ山)、また生活再建途上の私たちの現況では、親の責任を代行する 能力はありません。親の責任の代行は筋違いです。親の責任を希薄にしてしまう逆効果 しかないことに気付きました。  いわれてみると〈マムシの写真〉を、私は1枚も撮っていません。なにしろいつも私 一人が捕獲係で、マムシにかまれないよう捕獲することに全力をあげ、自分で自分を撮 ることはできません。女房も連携プレーで7つ道具の手配であたふたし、捕獲現場を撮 る余裕はありません。  実は野生生物との「親戚付き合い」が、つぎかつぎのつぎの拙著のテーマになってい きそうな気配です。もし、芝田さんの写真が捕獲現場の〈マムシの写真〉で焼き増し可 能なら、1枚提供していただけませんか。急ぎません。撮影、提供者の氏名は当然、明 記します。  宙宜君製作のポストにとまっていたアカゲラの写真なども、将来の拙著に登場するこ とになるかもしれません。これをお譲りするはずが、まだ約束不履行のままであること も忘れていませんが、大量のネガをひっくり返して探せるところまでいたっていません。 あしからず。 サナギマンさん(#11174)  秘蔵のマムシ酒を無理強いすることは絶対にありませんので御安心ください(もった いない!)。じっくり醸成、貯蔵し、70歳になったら、毎日チビチビと飲み、若返る つもりです。  品種が小粒の大豆ですが、毎日食べ始めました。卵焼きや味噌汁、サラダなどに入れ もりもり食っていますが、老夫婦だけでは食べ切れそうにありません。それにまもなく 黒大豆も収穫期になります。こられる時期が間に合えば、シシトトウやナスの横取りの 代わりに収穫してください。  芝田さん、Nackさんや常連さんも、小粒大豆を御希望ならどうぞ。芝田さんが親 子づれなら、一緒に収穫できる時期だといいのですが、なんなら無料産直してもいいで すよ。小粒大豆は自給計画外ですが、自給予定の黒大豆は譲れる余裕ができるかもう少 し日時がたたないとわかりません。  落花生のあとに野菜を作るのもおもしろいですね。実は大豆のあとにタマネギかなに か野菜を作るつもりでいます。だから、大豆の収穫を少々急いでいます。雑草と豆類で 少しずつ土地を肥沃にできないものかと企んでいます。  刈った雑草を緑肥に使って大根をまきましたが、これが順調です。根の方は地面が固 いので大きくなれないかもしれません。だから、その顔色を見ながら大根も葉っぱで食 べています。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11219 ◆山猿塾だより◆146-ふれあい牧場の悩み FAGRI掲載日 97/09/14  山猿塾とわが家を訪ねてくれる人たちは、この「たより」やパソコン通信のやりとり も読んでいない場合が7割前後になりました。それだけいろんな人たちに接し、私なり に観察してきました。はっきりいって親子連れに一番手を焼いています。自分の子ども のことしか考えない親に困りはてています。  もっといえば、自分の子どもの行動に対する親の無責任です。とくに父親が父親の責 任を果たしていません。これにどう対応していくかは、わが家にとって切実な課題です。 親子問題は、いずれ拙著のテーマにもなっていきそうです。昨14日、拙著を読んだ会 社経営者のTさんが訪ねてきました。まず、Tさんの牧場の現実から紹介します。 ◇動物と自然にふれるボランティア牧場◇  Tさんは6年前に難病にかかったのをきっかけに、会社経営を奥さんらにまかせてボ ランティアで各種の動物を飼育し、子どもたちが動物や自然にふれあえる牧場を始めま した。彼は自然保護協会の自然観察指導員や兵庫県森林インストラクターでもあり、あ る公立大学で自然学習の教師の卵たちの講師もつとめています。  訪ねてきたのはわが家を見物するためでしたが、悩みの相談でもありました。年間6 00万円の私財をつぎ込んで牧場をつづけてきたが、このままではやってられないとい います。やりたい放題の子どもと親に手を焼いて疲れ果て、持病を悪くしては入退院を 繰り返しているそうです。  わが家と違って資金や経済的な生活の心配はないようですが、やってくる親子がなん でもかんでも自然のものはタダと思っているのか、近隣の家の柿やスイカなどを勝手に 取るそうです。むろん牧場のものもわが物顔で取ってしまうといいます。 ◇自主的カンパも横取り◇  温泉を掘り当ててこれも無料で開放していますが、近所の老人たちは「タダではかえ って気を使うから」と、自分たちでカンパ箱をこしらえて100円ずつ入れるようにな ったそうです。だが、その100円も、だれかが近くの自動販売機で使ってしまうらし く、Tさんはいまだに1円も受け取ったことはないそうです。  冷蔵庫を備えビールなども置いていますが、缶ビールを飲んだ老人が220円置いて 帰ってもそれまでなくなり、冷蔵庫も空っぽになってしまうといいます。「ビールもな くなるから、子どもじゃなく大人がやるんです」と憤激していました。  よその田畑にも平気で石を投げ込みます。Tさんの自宅にもどこからでも入り込んで きます。奥さんが仕事で疲れてテレビを見ていても、勝手にチャンネルを変えて居座っ てしまうといいます。防御策として、奥さんは真夏で暑くても窓やカーテンを閉めて我 慢しているそうです。  山羊や羊のような草食動物に肉をやったり、逆に肉食動物にキュウリやナスなどをや ったり、毎日のその始末だけでも大変だといいます。温泉に入ってもだれ一人として掃 除するわけではない。帰る前に親が「お方付けの時間よ」と子どもたちにいいはします が、親も子どもも始末をつけるわけではなく、「さあ帰りましょう」と帰っていったら、 なに1つ片付いていないそうです。  宿泊施設もあってシュラフのない子どもには貸しているが、必ずだれかが寝小便をす るそうです。ふだん運動不足の子どもたちが水遊びをしたり、急に走り回ってのどがか わくので、やたら冷たい物を飲むからです。だが、親は始末したりわびたりするどころ か「トイレが外だから行きそびれた」と、トイレとTさんのせいにします。  自然教室も開いていて、工作に使うカッターナイフを持ってくるようにいっても持っ てくるのは半数で、親が抗議の電話をかけてきました。「危ない物を使わせなくても、 工作ぐらいできろだろう」というわけです。 ◇告訴されたTさん◇  最悪の例はTさんが告訴された件です。動物にもいろいろな都合がありますが、寝て いるアナグマを自分の子どもに見えるようにしてやろうと、おりのなかのアナグマを棒 でつついたらしく、おりのなかに入れていた指をかまれました。訴えはアナグマを飼っ ているTさんの管理責任を問うものだったようです。  Tさんは好意で開放すればするほど付け込まれていく現実に「どこまで開放したらい いのか」と、悩んでいました。逆にいえば、近隣の農家への被害をなくし自分たち家族 の生活を守るために、こういう親子をどこまで制限、規制したらよいのかということで す。  また、Tさんが「どうしたら解決できますか」というので、私は、自分の生活を守ろ うと思えば「やめる以外にないでしょうね」といいました。あまりにもわが家の悩みと 同じでした。  Tさんの知人は「あまり変なのがこないように料金を取ったらどうか」とすすめてい るそうです。私は「それは反対だ」といいました。「タダでも他人の生活を考えないで 付け込んでくる人から、1000円でも取ったら、金を払って入るんだからと、もっと サービスを要求し、後始末をさせるのも当たり前になる」といいました。牧場の趣旨に も反してきます。  Tさんの深刻な悩みを聞きながら、他人事ではないと思い、ここに紹介しました。次 回は山猿塾とわが家の実情を紹介しますが、この会議室でも公開されているさまざまな オフで、受け入れ側の農家にはこういう悩みはないのでしょうか。この機会におたずね したいと思います。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11224 ◆山猿塾だより◆147-山猿塾の特徴 FAGRI掲載日 97/09/15 ◇Tさんの牧場との違い◇  わが家の悩みはTさんとかなり共通していますが、Tさんの牧場と山猿塾とは根本的 なところで異なります。Tさんが私財をつぎ込んで牧場を始めたのに対して、山猿塾は なにもないところから、テントだけのキャンプから始まりました。  参加のみなさんと一緒に汗をかいてひまわり小屋を建て、そこに移住してきた私たち もゼロから自宅を自力で建築しました。そして、それぞれ参加者のなかから自主的、自 発的に事務局や現地事務局、さらには準備委員長を自称して、それぞれが役割を分担し てきてくれたことです。  こんなふうになったのは、中核の常連メンバーがFAGRIを舞台に一定の意志疎通 もでき、互いの状況、心情が理解できていたからではないでしょうか。また、ゼロから 始まったので、だれにも依存できず、それぞれが自分なりになにかやるしかなかったか らではないかと思います。  いま自主管理ルールをみんなで検討し、有志がひまわり小屋を自費で増築中ですと話 したら、Tさんは非常にうらやましがっていました。「うちもそんなふうになったらい いけどなあ」といっていました。やはり始まりから豊かな私財を投入し、年間600万 円もの私財を使っていると、相手の依頼心を増長し「たかり」と「ほどこし」の関係に なりがちなのではないでしょうか。 ◇私たちの仕事と生活◇  私たちも参加者のみなさんの草刈りや樹皮はぎなどに助けられ、自宅を完成しました。 その自力建設の記録も書き上げ一段落付きましたが、これからは生活の基礎を築いてい くのが課題です。家はできてもそれだけでは生活できません。  これまでの2年余は私が建築に専念し、私の収入はゼロに近く、女房が生活費を稼い で支えてきてくれました。そのため彼女は東京の出版社の仕事を過大なまでに引き受け、 働き詰めでした。いまもその継続の仕事で手一杯です。  一方、私は本業の方では絶筆状態で、東京の出版社や編集者などとも絶縁状態でした。 今後の生活の基盤を確立するには、私が本業の仕事で生活できるよう再起を図らなけれ ばなりません。とはいえ、コンピューター病の腕はまだ完治していません。  私の平均的な1日は、2時間から半日は肉体労働で全身を使いつつ、それ以外は朝か ら夜9時ごろまで、執筆、読書、調べ物、資料整理、思索などで本業に集中し始めまし た。出始めた老齢年金も10万円足らずで、フリーの身ではなんの社会保障もありませ ん。自分で働いて稼ぐ以外に生活の道はありません。一生涯働きつくすつもりであり、 働くのは苦痛ではありません。 ◇民宿のお客さん気分◇  しかし、物書きは遊んで暮らしていると思われているのでしょうか。分不相応な創作 住宅が見えてくると、かなり様相が変わってきました。一部ができて私たちが仮住まい のひまわり小屋から本宅に引っ越した段階から、テレビの報道を見た主婦が、民宿と間 違えてやってきました。  シュラフもなにも持っていないので、女房が仕事をしている書斎をあけて泊めました。 食事のとき以外はほとんど終日寝ていて、帰りに「おいくらですか」と聞かれ、はじめ てペンションか民宿に思い違いされていることに気付きました。「商売でやっているん じゃないから、金は受け取れません」といっても通じませんでした。  完成してから取材にやってきたある新聞記者も、「こういう民宿だったら1泊700 0円はとれますねえ」といいました。女房の仕事仲間が東京近郊から何日かやってきま したが、その感想は「こういうお家だっら民宿ができますね」でした。  アウトドアが好きだという見物人を案内したら「ここに泊めてくれるんですか」と聞 きました。冗談じゃないぜ。オレは民宿をやるつもりで建てたんじゃないぜ。金はなく ても、1泊10万円もらったって民宿のサービスと引き換えるつもりはありません。が、 気が付くと民宿のお客さん気分の人が増え始めました。 ◇Tさんの悩みと同じ根◇  プロの大工や工務店に建築を依頼するだけの資金がないから自力で建てたのであり、 「眠れる資源」の間伐材を活用すれば立派な家が建つという実物見本を造ったのです。 わが家も生活基盤の再建途上で、夫婦とも寝る時間も惜しんで最大限に働いています。 自宅はその仕事場です。  いまでも相手の仕事や生活の都合はおかまいなしの訪問者が絶えません。最近は主に 創作住宅の見物、見学などで週に2日はとられます。創作住宅の単行本が店頭に並んだ ら、いったいどうなるんだろう。いまからそれが不安です。  私たち夫婦が多忙な毎日でも、山猿塾は「いつでも、どなたでも、どうぞ」の基本姿 勢は崩していません。また、キャンプ山猿塾などの催しのさいには、私たちもできるだ け参加できるように努めています。ふだんでも参加者がきてくれたら、私はできるだけ 肉体労働の予定と組み合わせ、外へ出て一緒に汗を流すように努めています。  サナギマンさんがよくいう「自己完結型」の参加者はなんの問題もなく、私が得意の 「おまかせ」で私たちも自分の仕事と生活が持続できます。また、Nackさんが夏に つづいて秋のキャンプ山猿塾の準備委員長を引き受けてくれているので、これは心強い かぎりです。  さらに芝田さんには、仕事上で最大の難関になっているパソコンで助けてもらってい ます。これらはTさんの牧場には見られない特徴です。Tさんの牧場だけではなく、ど こにもない強みではないでしょうか。  しかし、現実にはTさんの悩みと同じ根は、絶えず潜在していました。これを放任し ていると、私たちの生活や山猿塾も維持するのが容易でなくなるぞ、というのが私のい まの気持ちです。いいにくいこともありますが、このさい遠慮抜きで悩みを明かそうと 思います。放り出さずに立ち向かおうと思います。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11231 ◆山猿塾だより◆148- FAGRI掲載日 97/09/15 ◇親はなにをしているのか◇  Tさんの奥さんは牧場へ子どもや親子づれがくるとなると、暑いのに窓にも鍵をかけ て閉じこもるという話でした。女房もその気持ちはわかるといっています。私にもわか ります。そこらじゅうに鍵をかけたくなるときもあります。  特に親子づれがきて黙っていると、私たちの私生活の場や仕事場に平気で侵入してく るからです。取材にきたある新聞記者の自宅でも、よその子どもが勝手に家に上がり込 んで、冷蔵庫も開けてほしい物を食べてしまうそうです。「いったい親はどういうしつ けをしているんだろう」と、ぼやいていました。  私も同感です。Tさんの話を聞いていても、親どもは腰抜けかと思いました。私たち がTさんほど生活を侵害されずにすんでいるのは、そんなめちゅめちゃな侵害を、力ず くでも許さないからです。生活や仕事の場を乱されるなら、相手がなにものであろうと 我慢しません。  むしろ始末がわるいのは、相手が子どもの場合です。私は子どものいいなりにはなら ない「頑固親父」です。いや、もう年齢的には「頑固爺」というべきでしょうか。自分 の子どもがこわいのか、子どもにまでゴマをすってばかりいる、いまの軟弱親父どもに は我慢なりません。  いつか地元の小学校の親子ふれあい学級の見学を「軟弱親父の尻ぬぐいなんかできる か」と、一時断ったのもそのためでした。ごく最近は「いまこそ頑固爺の出番だ」と思 えるようになってきました。これはなかなか根深い現代社会の問題で、自分のテーマの 1つにして、正面衝突してみようかと思い始めたからです。 ◇残念な土間復権の逆効果◇  当地の集落、市ノ貝は行き止まりで、山を越えないかぎり通り抜ける道路がありませ ん。近年まで鍵を掛けている農家もまれだったそうです。だが、いまではいたるところ をアルミサッシに換え、鍵をかけています。  いまの農家はたいがいが、玄関を入ると靴を脱いでスリッパにはきかえ、応接室か居 間に通されて、他人行儀に応対する住宅の構造になってきました。また、洋式に個室で 区切り、台所もシステムキッチンになり、年寄りがせっかく作った泥付きの自家野菜の 置き場もないような構造になってきました。  かつては土間があり、土間では親しい近隣の農家の人たちが土足のまま入ってきて、 食事の準備や夜なべをしながら人と人の交流の場となっていました。土間にはかまどや 井戸もあり、泥付き野菜や薪など自然の産物が持ち込まれ、ここから野良に出、また野 良からここに戻りました。いうなら住まいのなかの人と自然の接点でした。  創作住宅の設計の中心は、この土間を復権させることでした。土間が人と人の交流の 場、「他人同士の親戚」付き合いの場としたかったからです。また、土足のまま泥付き 野菜や薪が持ち込める、自然との接点を住まいの空間に入れたかったからです。  かつては、家人が「どうぞ、上がってください」といってはじめて、親しい他人も土 間に接した家人の部屋に上がり込みました。部屋でなければ用が果たせないときには、 用件をいったうえ「上がらせてもらってもいいですか」と、家人の許しをえてから上が りました。  かつての土間のある開放的な農家の住宅構造も、こういう「親しきなかに礼儀あり」 のルールで、それぞれの私生活や仕事を侵さずに尊重しあっていたのです。だが、現実 に土間と創作住宅ができると、私の意図は逆効果を招くようになってきました。  放置していると、私たちがなにをしておろうと、どかどかと土足のまま私生活の場で も仕事の場でも侵入してくる、公認の空間になってしまう状態です。私は「他人同士の 親戚」付き合いはめざしましたが、私生活と仕事まで放棄した覚えはありません。  また、わが家は大衆食堂ではないので、日常は夫婦二人分の食事しか用意していませ ん。いざ食事をしようというときに、いきなりやってきてどかっとテーブルに付かれた ら、女房も自分が食べる予定の食事も出して自分は残飯ですませることにもなります。 あるいは並べる食事もテーブルに出せなくなり、生活の予定が狂います。  どういうわけか、突発来訪者にかぎって食事時が多いのです。そして、相手が残飯で すませたという心遣いにも気付かない不届き者が多い。「そんな不届き者に飯なんか食 わせる必要はない」と私はいいますが、女房は性格的にそれができません。  私にもすでに独立した2人の娘がいますが、幼かった彼女らの机の引き出しも無断で 開けたことはありません。子どもには子どものプライバシーがあるからです。また、娘 が幼いときから私の机上の物、つまり父親の一生を賭けた仕事の道具は鉛筆1本でもさ わらせませんでした。これは親の私の仕事に対する姿勢です。  ところがいまの子どもはいったん家に上げたら、どこにでも平気で入ってきて、洗面 所の棚でもどこでも平気で開けてのぞきさわりまくります。私の机上の文具などの仕事 の道具でさえ、勝手におもちゃにします。  親が見ていてもなにもいいません。それが私たちとの親しさの証明とでも思っている のでしょうか。親はせいぜい口先で「いけませんよ」とクソやさしくいうだけで、やめ させません。それどころか、親子ぐるみの場合も少なくありません。  これでは黙って見過ごせません。軟弱親ども、他人の生活や仕事をなんと思ってけつ かるのか。この怒りは次回に譲ります。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11238 ◆山猿塾だより◆149-軟弱親父め! FAGRI掲載日 97/09/16 ◇自分の子が恐いのか◇  地元の親しい農家の小学高学年の子どもと父親が夜きました。子どもは勝手に部屋に 上がり風呂場の方に入りました。「勝手に他人の家に上がるな」と怒鳴りました。父親 もあわてて「よその家に勝手にあがたらいかんで」と口先ではいいました。  口先で自由にならないのは承知のスケで、やはり子どもは聞きません。私は「おばさ んの裸を見る気か」と、首っ玉をつかまえて土間までつまみ出しました。父親にも「他 人の家に勝手に上がるようなしつけをしているのか」と聞きました。  「そんなこと急にいわれても、急にはしゃんとさられしまへんで」という返事でした。 軟弱親父め、しっかりせい。子どもはとっくに親父の姿勢を見通しだ。断固たる態度で 示せ。からだをはっても最低限のけじめはつけさせろ。  やはり小学高学年の子どもをつれた父親が、突然、夕食準備の時間帯に見物にきまし た。私は仕事を中断、女房も食事をテーブルに出すのをひかえて中断です。他人の生活 の都合など考えない毎度の突発訪問です。  子どもは大人同士の話にものの2、3分であき、テーブルの上の鉛筆を勝手に取って 鍋敷きをなぞりはじめました。親はそれを見ながらなにもいいません。「それは落書き するものじゃないぞ」と、私がしかりました。  そこらじゅう落書きされたらたまったものじゃありません。親子とも他人の物をなん と思っているのでしょう。親は不思議そうに私の顔を見ていました。親がいても子ども からは目を離せません。  家を見物にきた2歳くらいの子どもをつれた両親を案内しました。私の仕事場まで案 内したさい、仕事机の上の文具を勝手に手にしてきたらしく、土間まで持ってきておも ちゃにしていました。両親ともなに1ついうでなく、ほったらかしです。  私の娘だったらぶっ飛ばしたでしょう。この両親はニコニコと子どもにお愛想を振り まいているだけでした。人間の子どもはペットじゃないんだぜ。他人の仕事の道具さえ おもちゃにさせるようでは、自分の仕事の価値も子どもにも伝わらず、いずれ飼い犬に かまれるでしょう。  私は子どもは嫌いじゃないが、「オレの子どもはかわいいだろう、だからオマエもオ レの子がかわいいだろう」という、親の押し付けが気にくわない。親の目のなかに入れ ても痛くなければ、他人も痛くないと思っているのだろうか。 ◇親父は盲目の母性本能をカバーせよ◇  はっきりいって、子どもべったりの母性本能に対しては3分の1程度まであきらめの 心境にたっしている。だからこそ、父親の責任に期待しているが、近年は親父の母性化、 雌化が目立つ。プラスマイナスでゼロにはならず自乗化される。  それにしても女性は子を持つと、どうしてこうも他人が見えなくなるのだろうか。新 米の母親がわが家の輪ゴム箱から輪ゴムをつまみ出す幼児に「やめなさい」というと、 横からベテラン母親がいいました。「子どもの発達にいいからどんどんやらけるのがい いのよ」と。あほか。いったいだれの輪ゴムだと思っているのか。  子どもにさえよければ、他人はどうでもよいのか。つまむなら、そこらに小石でもな んでもあるじゃないか。幼児期からこういうしつけを受けていれば、他人のことはへと も思わぬ人間が大量生産される。自分の物は自分の物、他人の物も自分の物。これでは 貧乏人は子どもとも付き合ってられない。 ◇自分の子どもが全世界◇  夫婦とも多忙なので、来客の前などにやむなく掃除機をかけますが、それも月1回ぐ らいでしょうか。実害のないクモやコオロギなどが部屋にいても自由にさせていますが、 土間の土足の土を部屋に撒き散らして掃除の回数を増やすような真似はしません。土間 のあがりかまちが土と部屋の境目です。こんな説明が必要なんだろうか?  子どもはいったん部屋にあがると、必ず土間へ裸足で下りそのまま部屋にも上がりま す。だまっていると、通気庭(中庭)にも裸足で下りてそこらじゅう土だらけにして運 動会です。外でも庭でも土には山ダニも生息していて、こいつもくっついてきて部屋に 落ちます。結果はヤマダに付き土足で部屋に入るのと同じことです。  テラスは布団や洗濯物の干し場でもありますが、子どもは土足で上がって走り回りま す。私がどならないかぎり、親父でさえなにもいいません。元気のよい自分の子をうれ しそうに見ています。自分の子どもさえよければ万事よし。他人のことは細かいこと。 自分の子どもが全世界。いったい親父の世界はどうなっているんだ。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ 11239 ◆山猿塾だより◆150-軟弱親父め! FAGRI掲載日 97/09/16 ◇子どもに始末をつけさせない親◇  土地はすべてだれかの所有物です。山猿塾の敷地の下の荒れたカイズカイブキの放任 田も他人の農地です。子どもは平気で石を投げ込み、親は喜んで自分の子どもを眺めて います。農家は好きで放置しているのではなく減反転作田です。持ち主にすれば水田の 水稲に投石されたのと変わりません。  石は草刈りのじゃまにもなります。私は「他人の田んぼに石を投げるな。拾ってこい」 と怒鳴ります。親はたいがい笑顔からこわばった顔になります。「そんな厳しいことを いって、うちの子をいじめなくてもいいじゃないか」という顔です。  親は絶対に自分の子どもの後始末をさせようともしませんし、自分が子どもを引き連 れて石を拾いに行こうともしません。投げっぱなしです。やりどくです。彼らは他人の 子どもに自分の家の庭まで石を投げ込まれても、笑顔でいられるのでしょうか。  わが家の周辺の農地は、南向きで日当たりがよく、市ノ貝の集落では農作物がよくで る土地でした。農家は自分の家さえ北側の山すそにつつましく建てて、ここに建てるの はひかえいた大事な農地です。  田畑や山林をゴミ箱と思っているのでしょうか。これはわが家の畑でもサナギマンさ んが開墾した畑でも同じです。「平気で踏みつけるのがいる」とサナギマンさんももぼ やいていました。他人がなんの必要があって汗をかき耕したのかわからないのでしょう か。  相手がどんな必要があって作っているかも確かめず、クスノキの粉でも勝手にほかの オガクズとごっちゃ混ぜにしました。私が「なにするんだ」と怒鳴っても、親は横を向 いています。自分の子どもがやらかしたことの始末も付けさせないんですね。  使った農具を子どもが片付けないので、帰るとき私が「片付けろ」と2、3回いって も片付けません。母親が代わりに取りに行こうとするので、私は「自分で片付けろ」と いいました。それでも農具を取りに行きません。結局、母親が私にわからないように取 りに行きました。  だが、明らかに私が直接、貸した水運び用のウイスキーのでかビンは放置したままで した。絶対にわが家では片付けない方針でした。本人も何回かきてわかっているのに2 年たっても片付けませんでした。草刈り機で割るとけがをしかねません。結局、私が片 付けました。  オガクズも樹皮も木屑も子どもの遊び道具です。大いに活用すればいいでしょう。だ が、始末が必要です。子どもたちが坂道にオガクズの山を造ったり木の皮でとうせんぼ を造ったりして遊んでいました。だれがどういうふうに片付けるのかと見ていたら、親 が運転するクルマがその子どもを乗せて踏みつけて帰りました。  坂道はだれが通り、オガクズはだれが片付けると思っているのでしょう。大雨が降れ ば他人の田にも流れ込みます。バイクの郵便配達が転倒する心配もあります。結局、私 が片付けました。  親父が自分の子どもの後始末もつけさせられないで、いったいだれが始末を付けるの か。創作住宅の完成までは、私もまだ外仕事が中心で子どもたちの動きも見えましたが、 本業が中心となっていま、もう親の責任の代行はやってられません。  こんなことは他人のクソ爺にやらせることじゃないんだよ。親父のやることだよ。親 父の責任の代行をクソ爺にやらせるな。 ◇子どもの依頼心を増長させている親◇  親は自分の子どもの遊びや生活に必要な物を自分で用意させないのでしょうか。いち いち他人に依存しすぎます。「鉛筆貸して」に応じたら、必ず「紙ない?」「消しゴム ない?」「鉛筆削りない?」が付いてきます。貸した物はもた返してもらわなければな りません。このなのに付き合っていては仕事になりません。  わが家では親が飲むビールを用意しても、子どもの飲み物は用意しません。女房に無 心する子どもには「他人の女房を簡単に使うな」といったこともあります。子どもの飲 み物は年齢差もあり、親の管理責任です。一人ひとり違うのをなんで多忙な女房がいち いち作らなければいけないのか。 目次へ MSHIBATA'S Home Pageへ